お久しぶりです。ドン・ウーです。
11月1日から2020年度トライアウトの募集が開始いたします。
本記事ではフィニッシャーズトライアウトとはどんなものかという事を深掘りしていこうと思います!
🔶トライアウトとは
マックスファクトリーとグッドスマイルカンパニーの共催にて実施される制作職の登竜門「トライアウト」。
原型師・フィニッシャーを職業にしたいと本気で考えている方々に向けて、2010年より実施開始、今年で10周年を迎えた両社オリジナルの採用制度です。
トライアウトは、普通の採用と異なりご自身の持つ情熱と制作技術を余すことなく存分にアピールできる場となっております。
皆様が丹精込めて作った作品を選考担当共々楽しみにお待ちしております。奮ってご参加ください。
トライアウトのページはこちらです!
※トライアウトの詳しい求人内容に関してはTOPページの求人別リンクからご覧ください。
日本以外のアジア地域の方はこちらをご覧ください:http://goodsmileasia.info
*We regret that, at present, applicants to the Tryout must speak and understand Japanese
今回はフィニッシャーズトライアウトに合格し、今年からマックファクトリーでお仕事をしている三嶋恵利香さんと、
グッドスマイルカンパニー所属の敏腕フィニッシャー杉健司さんに来てもらいました。
まずは「そもそもフィニッシャーってどういう職業?」という方に向けてお話を聞きつつ深掘りしていこうと思います。
メンバー紹介
(以下、三嶋 恵利香:三嶋/杉 健司:杉/ドン・ウー:ドン)
ドン:それではインタビューを始めさせていただきます。よろしくお願いします。
三嶋、杉:お願いします。
ドン:まずはフィニッシャーとはどういう職業なのか教えてください。
三嶋:デコマス(量産するにあたって工場での見本になるもの)やイベント展示などでお客さんが直接目にするもの、GSCサイト・商品サイトなどで商品の案内に使うようなものを塗装するというのがフィニッシャーという職業です。
杉:簡単に言えば「フィギュアの量産見本となる最初の1体の色を塗る人」というわけですね。
ドン:フィニッシャーの魅力とは何でしょうか?
杉:昨今ではTwitterなどのSNSを通してユーザーの皆様からのリアクションをダイレクトに味わえるようになりました。
ユーザーの皆様が購入に至るまでの判断材料になるものを作ることができる達成感が魅力だと感じます。
ドン:何物にも代えられない魅力があるんですね!
フィニッシャーとはどんな職業なのかが見えてきました。
それではここからはトライアウト出身者の三嶋さんにお話を聞き、フィニッシャーズトライアウトとはどのようなものなのかを掘り下げていこうと思います。
三嶋さん、よろしくお願いいたします。
三嶋:よろしくお願いします。
ドン:まずは三嶋さんがどのような人なのかという事から探って行こうと思います。
学生時代はどのようなことをしていましたか?
三嶋:大学では主にガラスの勉強をしていました。
進路に悩んでいた際に、ずっと好きだったフィギュアを仕事にしたいと考え、卒業後に専門学校に通うことにしました。
浪人時代に食べ物の模型を紙粘土で作ったことが造形が楽しいと思ったキッカケですね。
ドン:そうだったんですね。トライアウトのことは専門学校で知ったのでしょうか?
三嶋:そうですね。先生が教えてくれました。
実は専門学校に入る前はフィギュアを塗装したこともなくってプラモデルを触ったことすらなかったんです。学校に入ってからですね。
ドン:なんと。未経験だったんですね。
杉さんはどうでしたか?
杉:僕は子供の頃から模型が好きでした。
大学生の頃に塗装に興味を持ち、ガレージキットに手を出すようになりました。
ドン:いわゆるモデラーだったんですね。
杉:そうなんですよ。
その後入った塗装の下請け会社でフィニッシャーという職業やフィギュア業界をしりました。
原型師を目指して専門学校に入りました。三嶋さんと同じ専門学校ですね。
卒業後にフリーランスで少し仕事をした後にフィニッシャーとしてグッドスマイルカンパニーに入社しました。
三嶋:同じ専門学校とは何たる偶然…!
ドン:制作部には他にも同じ専門学校出身の方が数人いますね。
それにしても杉さんは入社するまでに色々な事をしていたんですね、知りませんでした。(笑)
杉:ここまで複雑なのは僕くらいじゃないかな。(笑)
ドン:フィギュアについて学ぶ中でフィニッシャーを志したキッカケなどありますか?
三嶋:そうですね…
例えば同じガレージキットでも塗り方ひとつで雰囲気をガラッと変えられるというところに感動したのでフィニッシャーになりたい、自分もそれをやりたいと思いました。
ドン:第一課題はどんな作品を出しましたか?また出すものはどんなものが良いですか?
三嶋:美少女系を2つと生き物系を1つ提出しました。
学生時代はほぼ美少女系のガレキしか塗っていませんでした。(笑)
ドン:ポートフォリオの様な感じでいくつ出してもOKなんですね。
三嶋:制限はありませんでした。
個人的には水着系のキャラは肌の塗り方とかを見せるのに良いかなと思いますね。
杉:第一課題と違って、第二課題は会社側から提供されたキャストを彩色して提出するんですよ。ここがスカルプターズトライアウトとの大きな違いですかね。
三嶋:どんな課題が届くか楽しみでした。
ドン:第二課題ではどのような方向性の塗りが求められていると考えましたか?
三嶋:第二課題と一緒に見本が送られてきたので、それに忠実にということが求められているのだろうと。
固有色であったり全体の雰囲気を極力見本に近づけるように意識しました。
ドン:スカルプターズトライアウトと違いコメントでの修正指示やフィードバックがない分、自分の腕を信じて第二課題に挑むことになるんですね。
三嶋:その通りです。めちゃめちゃ不安でした。(笑)
ドン:第二課題を塗っている際、自分だったらここはこの色にするなという葛藤はありましたか?
三嶋:そうですね。「何でこの部分はこんなに赤っぽいんだろう」と思うことはありましたが、まあこの通りにやれってことなんだろうなと。(笑)
杉:そうですね。
元のイラストが世間に発表されてたりする場合、それがいろんな人の目に触れて来たわけですよ。
みんながいいなと思ってそれが世間に出ているので、それを自分の判断で変えてしまっていいものか僕だったら自信がなくてできないですね。(笑)
いろんな経緯があって今の色になっているという意識は大事にした方がいいと思いますよ。
ドン:フィニッシャーズトライアウト応募作品を見ると、結構元のイメージと色が違うなと思う作品もあるじゃないですか。
杉:そうですね。
自分の好きなタッチで塗るのは趣味ではいいですが、お仕事となるとそうも行きません。
たくさんの方の第二課題に比べ三嶋さんの作品が1番色味だったり雰囲気が見本に近かったんですよ。
他にも技術的には頑張っている方はいたんですがテイストがイラストとは離れていたり。
ドン:合格の決め手は忠実性というか、「元になるイラストに寄り添って作れるか」だったのですか?
杉:マスキングの丁寧さや塗りのグラデーションの繊細さなどの技術もポイントですけど、自分の個性を出すというよりかは与えられている課題を達成する方を重要視しています。
その人の個性を前面に押し出したフィギュアの企画もありますが無理に味を出そうとしなくても大丈夫です。個性というのは消そうと思っても出ちゃうんですよ。
癖と個性は紙一重のところがあって、無理に「これは自分のやり方だから!」って固執してしまうと会社でやっていく上で仕事の幅が狭まっちゃうし、上達もできないんです。
将来お仕事になったときイラストをもとに彩色をすることが多いんですよ。
そのため企画担当さんや版元さんの意向をいかに取り入れて、それを反映するかということが大事になってくるんですね。
トライアウトでは何人もの中から選考されるわけですから、どんな人材が求められているのかを考え、そこから逆算して応募作品に反映する方が合格しやすいのではないでしょうか。語っちゃった。(笑)
ドン:トライアウトへの作品を撮影する際どんなことに気を付けたら良いですか?
三嶋:当たり前のことですが、スマホではなくカメラを三脚で固定してから撮ることが大切ですね。スマホではパースがついてしまって形が歪んでしまいますから。
顔に影が落ちないようにライティングを気をつけることも大切です。
杉:色味や塗装のきれいさを見てもらうためには気を付けなくてはならないことが多いんですよね。
ドン:現在、入社されて数か月が経ちますが、どのような仕事をしていますか?
三嶋:私の場合、新型肺炎の影響で自宅待機の期間が2か月ほどあり、その間はプラスチックモデルの磨きと組立てを練習として行いました。
出社が始まってからは練習用のfigmaを一から磨き→組み立て→調色→塗装ということをしていました。
その間に少しずつ仕事が振られて上司や先輩方のお手伝いをするという感じですね。
ドン:働き始めて勉強になったと感じるところなどありますか?
三嶋:今まで趣味で多少色味が違っても妥協する部分があったりしたのですけど、お仕事になったらそうも言っておられず調色の作業ってすごい大事で難しいと感じました。
その反面良い色ができたときの充実感はすごいものがあります。
ドン:なるほど。杉さんもそうなんですか?
杉:長いことやっていると色味に悩む時間が減るので僕はスパッと決まりますね。ダメな時はだめですが。(笑)
良い色ができたけれどきれいに塗る時間が無いのでは本末転倒です。
時間を掛ければ元イラストにピッタリの色を作ることはできますけど、イラストの印象と全く異なる程でなければ、僕は時間配分の中で「いかにきれいに仕上げるか」「綺麗なグラデーションができるか」ということに重きを置いてやっています。
ドン:たまにフィニッシャーの方にこの色どういう手順で塗っているのですか?と聞くことがあって、洗練された少ない手数で良く見せるような技術があるじゃないですか。
それで「こんな風にできるんだ!」という気づきがあるんです。これだったら何色も塗り重ねてこんな綺麗な色になるのだろうな、というものをたった2色でとか。
これは自分の趣味の模型に役立つなって。仕事には生きてないですが。(笑)
一同:(笑)
ドン:こういった色彩のセンスは、やはり感覚によるものなんですか?
杉:一握りの天才は感性でどうにでもできてしまうのかもしれませんが、普通の人は経験値を積むしかないのかなと思っています。
ドン:その経験値を積むためにはどのようなことに気を向けた方がいいのでしょうか?
杉:失敗を恐れないことですかね。
なんだかんだでほとんどの人が同じようなことで失敗すると思うんですよ。
失敗しちゃったことを嘆くんじゃなくて、失敗をしたらしたでいかにリカバリーをするか、やり直しするかが大事かなと思いますね。
リカバリー技術があるかどうかも、上手さに含まれていていると思います。
あとは失敗した原因を考えることも大切です。原因をクリアしながら作業を重ねれば上達しやすいのではと思います。
ドン:スケールフィギュアを塗装する際、真っ先に塗りたい場所はあるのでしょうか??
杉:結局バランスで成り立っているものなので、どこというより例えば肌色の塗装→髪の塗装→互いの相性を見る、という感じですね。
こだわりたい部分があればそこに時間を割きますが、基本的には組んだ時の調和を大切にしています。
三嶋:一つ一つの色にこだわりすぎても、合わせてみたらガチャガチャなるようだとかけた時間も無駄になっちゃいますから。
ドン:確かに一番感動するのは、パーツを一通り塗って組んだ時の見栄えがまとまった瞬間ですもんね。
杉:フィギュアっていろんな色がのっているから、単体で見たら「この色だ」と思っても、目の錯覚のせいで組み合わせてみたら色が違うってこと結構ありますよね。
三嶋:あるあるです。(笑)
杉:パッと塗って違うなと感じたら、すぐ直すフットワークの軽さや反射神経がとても大事だと思いますね。
直したくないなあと思いつつも、モヤモヤするよりは思い切ってやり直してしまった方が早く進むように思います。
ドン:最後に、フィニッシャーを目指す皆さんに一言ずつお願いします。
三嶋:フィギュア業界で働きたいと思って専門学校に入学するまで完全な素人だったので、
自分のような初心者が応募しても良いものなのか…と不安に思ったことはありました。
思い切って応募したおかげでフィギュア業界に入ることができた今だから言えることですが、とりあえず出すことが大事です!
杉:昨今では情報を得られるツールが増えて若いうちから目が肥えてるので、最初からうまい人が多いです。
フィニッシャーズトライアウトは、業界で活躍している人に見てもらうことのできるチャンスです。応募しても大丈夫かな、と迷っている方にこそ応募してほしいですね。
ドン:ありがとうございます。
これでフィニッシャーのインタビューは終了です。三嶋さん、杉さんありがとうございました!
一同:ありがとうございました。
「フィニッシャーになってフィギュアを作りたい!」とお考えのあなた、
「トライアウト」の応募は11月1日(日)からスタート!となります。奮ってご応募ください!!!
以上、ドン・ウーでした!